健やかに幸せに暮らせる家。シムラが作るおおらかさとは
シムラで働く人たちの声をお届けする、STAFFインタビューがスタート。
第1回目は、健幸工房シムラ 代表取締役である志村社長にインタビューしました。
「健やかに幸せに暮らせる家」
——シムラが提案するのは、自然素材にこだわった、安心で心地よい住まいです。
家は、家族がさまざまな時間を過ごす場所。だからこそ、その時間をやさしく包み込み、受け止めてくれる「おおらかさ」のある空間づくりをシムラでは大切にしています。その想いのルーツには、社長が若い頃に触れた原体験がありました。
海外で経験した地産地消の家づくり
ーーまずは、社長ご自身についてお伺いします。
学生時代にオーストラリアへ留学されていたとお聞きしましたが、それは建築を学ぶためだったのでしょうか?

当時は建築を学びに行ったわけではなく、マーケティングを学ぶためにシドニーにある大学へ留学していたんです。現地にはトータル4年半滞在していたのですが、そのうちの3年間はあるシェアハウスにお世話になりました。そのオーナー夫妻には本当にお世話になりましたね。奥さんはスペイン人で、旦那さんはオーストラリア人という国際的なご夫婦で、とても温かい方たちでした。
シェアメイトも多国籍で、留学だけでなく仕事で来ている人達もいて、常ににぎやかで刺激的な環境でした。特に印象的だったのは、オーナーの旦那さんが大工だったことです。そのシェアハウスは外装から内装に至るまで、すべて彼が自分の手で作り上げたものでした。
ーー偶然にも、留学先でお世話になった方が大工さんだったんですね!当時、家づくりに関わるようなことはあったんですか?
それが、思いがけず関わることになって。オーナー夫婦は何年かおきに、奥さんの故郷であるスペインに滞在していて、その間旦那さんは向こうで仕事をすることもありました。ある日、オーストラリアにいた僕のもとに「これから家を建てるから手伝いに来ないか?」と連絡があったんです。宿と食事は用意するという話だったし、僕もちょうど長期休暇中だったので、スペインへ向かうことにしました。
向かった先は、人口50人ほどの小さな村です。水道も電気も通っていない場所で、まずは生活インフラを整えるところから始まりました。そこから家の土台作りに取りかかったんですが、ここではコンクリートも現地で手作りなんです。沢から水を汲んできて、⼟を掘ると沢⼭の平たい岩が出てくるので、それをまずはそれを⼿作業で取り除くところから。取り出した⽯も無駄にはせず、⼟台の材料として積み上げていきます。
すべてその土地の素材を使って、一つひとつ手作業で築いていくんです。かなり時間がかかりましたね。
僕は2ヶ月ほどしか滞在できなかったので、完成までは関われなかったんですが、土台ができ上がるところまでは手伝いました。本当に貴重な体験でしたし、今でも強く印象に残っています。
ーーコンクリートも現地で調達はすごいですね…!スペインでの家づくりは、どんな学びがありましたか?
そこで感じたのは、「その土地にある素材を使って家をつくる」というのが、本来あるべき家づくりの姿なのではないか、ということでした。地中海に位置するスペインは、特に沿岸部に森林が少ない。そのため、家づくりには木材ではなく、土や石が使われるんです。強い日差しと乾燥した気候には、石の壁がとても理にかなっているんですよね。
一方、日本は国土の約3分の2が森林で、四季があり、特に夏は高温多湿です。そうした環境では、調湿機能のある木材を使った家づくりが合理的であると感じます。現代の住宅には石油由来の建材が多く使われることもありますが、やはり「地産地消」で、その場所の気候や風土に合った素材を活かしてつくるという考え方は、シムラの家づくりの根底にあるコンセプトでもあり、影響を受けたところかもしれません。

シェアハウスのオーナーから学んだ、「手をかける」ということ
ーーなるほど。自身の経験から、本当に自分がつくりたい家のかたちが見えてきたんですね。
少し話は戻りますが、やはり留学中の経験が、家づくりに興味を持つきっかけに?
それまで家づくりにはまったく関心がなかったんですが、興味を持つようになったのは、間違いなくシェアハウスのオーナーであり、大工でもあった旦那さんの影響です。彼はとにかく、モノづくりの中にユーモアを忍ばせることがとても上手な人でした。たとえば、トイレの蓋に絵を描くなど、日常の中にさりげない遊び心を取り入れていたんです。そうした姿に触れるうちに、「家をつくるって、こんなに自由で楽しいものなんだ」と、自然と感じるようになりました。
今でも忘れられない出来事があります。ある日、大きなダイニングテーブルを囲んで話していたとき、彼は手にしていた果物ナイフを、突然そのテーブルにザクッと刺したんです。そして、こう言いました。
「テーブルっていうのは、テーブルクロスを敷いて大事に使うようなものじゃない。日々の暮らしの中で使っていくものなんだから、傷がつくのは当たり前。大切なのは、手をかけながら丁寧に使い続けていくこと。そうやって、家も家具も生きていくんだ。」
こういった会話や経験が、僕にとって“暮らし”や“家”、そして何より“おおらかさ”の本質を考える原点になった気がします。急にナイフを刺したのにはびっくりしましたけどね。笑
ーーたしかにびっくりしますね。笑
シムラの家づくりにおいて、その“おおらかさ”は具体的にどのようなかたちで表れているのでしょうか。
そうですね、単にゆったりとした空間を作ることだけではなく、家族の成長や暮らしの変化をまるごと受け入れられるような部分でしょうか。そこに人が住み、日々の営みが積み重なっていく。長く過ごす家だからこそ、閉塞感がなく、光や風が心地よく巡ることが大切です。
たとえば、朝カーテンを開けると光が家の奥まで届き、窓を開ければ足元を通り抜ける風が季節を運んでくる。そんなふうに、自然の気配を感じられる「余白」は作っていきたいですね。もちろん、耐震性やご家族の希望といった前提も大事にしながら、間取りはできるだけ風通しの良い、のびやかな構成に。そうした空間に息づくのが、シムラの家ならではのおおらかさなのだと思います。
暮らしにおおらかさを与えられる家づくりを
ーー自然素材に触れることで、人の心や暮らしにどんな変化が生まれると感じますか?
自然素材は、その手ざわりや香り、空気感が何とも言えない心地よさを感じさせてくれます。それって、単なる素材以上のもので、暮らしや気持ちまで整えてくれるような存在なんです。無機質なものに囲まれていると感じにくいけれど、自然素材に触れることで、少しずつ自分の中にもおおらかさが育っていくという感覚でしょうか。
建てた時が完成じゃないと思うんです。無垢の床材をメンテナンスしたり、棚を付けたり、ハンモックを吊ったり。手をかけることで愛着が生まれ、家と一緒に育っていく。そういった部分は、自然素材の家ならではの魅力です。
無垢材の床は柔らかく、ほんのり温かい。その優しい質感や心地いい空気感は実際に足を運んで感じてほしいです。もちろん、高気密・高断熱といった機能的な快適さも大切にしながら、季節のうつろいを感じられるような住まいを私たちは目指しています。家づくりは、暮らしづくりです。暮らしの営みに、おおらかさを与えられる家づくりを、これからも大切にしていきたいと思います。
