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出張版☆家づくりカフェ09~光のデザイン~

こんにちは!白岩です。
今日は私の本職である「デザイン」についてお話ししようと思います。

 

これは、私が一番好きな建築です。

 

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Wikipediaより引用

 

安藤忠雄さん設計の、茨木春日丘教会。通称「光の教会」と呼ばれ、世界的に有名な建築物です。
余談ですが、私を良く知る人には以外だと言われます。
昔、さんざん生意気言って怒られた人ですから。あなたの家には住みたくない!とか言って。笑
そのエピソードはここではあまり書けないので、聞きたい方は月イチで開催している家づくりカフェにお越しください。笑

話を戻して。何がすごいのかと言いますと、教会のシンボル「十字架」です。
世界中の建築家たちが教会を設計する際、教会のメイン空間である、十字架を掲げた礼拝堂をいかに素晴らしい空間にするかを考え、競い合います。家で言えばリビングですね。
皆が、いかにこの十字架を最上の素材や新しい技術、デザインで他にはないものにしようとしている時に、安藤さんはただ単にコンクリートの壁に十字のスリットを入れ、光で十字架を創りました。
私は学生の頃この建築を知った時に全身に電流が走ったような衝撃を受けました。
後から知ればなんだそんな事かなんて思えるデザインかも知れませんが、それは後付けだから言える話。
この時ゼロからこのデザインを発想できたのは世界で安藤さんただ一人です。
そういう事はたくさんありますよね。
フェイスブックやアマゾンのビジネス形態もそうだと思います。
物でもビジネスでも、ゼロから想像する創始者というのがいかに難しく、いかにものすごい発想力なのかということですね。
まさに「デザイン」です。
安藤さんの光の十字架で分かるように、デザインとは決してお金をかける事ではありません。
デザイナーというと華やかでゴージャスというイメージがあるようなので、皆さん「デザイン」してもらえばもらうほどお金がかかると思われているようですが、逆です。
デザインの本質とは、何かを足し算していく事ではありません。
むしろ引き算です。無駄を削ぎ落とし、本当に必要な要素を抽出し、それが最大限に活きる方法を、経験、知恵、創造力などを総動員して導き出す作業。
もし、予算が不必要に上がっていくデザインをしているデザイナーや設計士が居たとしたらそれはニセモノです。断言します。
なぜなら、実際に私が設計競技やデザインコンペで勝ってきた人たちが足し算のデザインをする人たちで、負けてきた人たちが引き算のデザインをする人たちだからです。笑
そんなお金があるのなら、それはぜひ「素材」に使って下さい。
質の良い食材がある程度高価な金額するように、家を構成する素材もまた良質なものはある程度高価になります。
でも、ここにお金を使わなかったら他の部分にいくらお金を使っても無駄だと思います。
料理同様、素材は全てのベース。根本ですから。
それに対し、デザインは工夫です。
例えば、
皆さんは窓が多いほど家の中が明るいと思っていませんか?
あるいは、窓が多いほど風通しが良いと思っていませんか?
だとすれば、かなりお金を無駄使いしてしまっているかも知れません。
家の明るさや風通しを決めるのは、窓のサイズ、形、位置、バランスです。

【家に入る光について】
例えば皆さんご存知のように、陽の光というのは方角と時間によって角度が変わります。
東は早朝から午前中に低い角度から光が差します。色温度は高い(白色寄りの光)です。
南はお昼前から夕方前まで最も長い時間最も高い角度から光が差します。紫外線による熱も強く伴います。
西は、午後から日暮れまで低い角度から光が差します。色温度は低い(オレンジ色寄りの光)です。
北の光は天空光と呼ばれ、一年中安定して穏やかな光が得れます。
学校では、屋根に付ける天窓は北側につけなさいと教わります。

【家を通る風について】
風は川の水と同じです。
風の量というのは、私たちの家の窓の数だとか大きさだとかには関係なく地球規模で吹いています。
私たちにできるのは、地球上を吹いてきてたまたま家の近くを通った風をどのくらい「取り込んで通過させるか」という事だけです。
たくさん取り込みたいならまず入り口を大きくする事が重要になります。
風を吸い込む(通り道をつくる)ために出口となる窓は必要ですがそのサイズは大きくても小さくても家の中を通る風の量は変わりません。
入り口からどれだけ入ってきたかで量はすでに決まっています。
なので、出口は小さい方が風の速度はあがり、体感温度は下がります。
ホースで水を撒くときに先端を潰すと水の勢いが増すのと一緒です。でも蛇口をひねらない限り水の量は変わりませんよね。
もうちょっと言えば、南側は大きくて北側は小さければ、夏の南東風は良く通り、逆に冬の北風は遮る事ができ、同時に、南からの暖かさは大きな窓から家の中に最大限取り込み、冬の寒さは小さい窓(大きな壁)で最小限に抑えることができます。
日本古来の民家などを見ているとそうなっている事が分かります。
つくづく昔の人は自然環境を良く捉えていたんですね。
現代の様に、電気やガスで冷暖房機器を使えばなんとかなるわけでもなかったので、窓の付け方を1歩間違えると命に関わる真剣さもあったからなおさらだと思います。
窓の大きな役割である光と風を例に出しましたが、窓は効果的に設置しなければ1ヶ所あたり数万円~数十万円のお金をドブに捨てているようなものです。
しかも、窓が多いほど家の強度は落ち、断熱性能も落ちます。
お金をかけて住み辛くしたり家の寿命を縮めているとしたら。。悔やんでも悔やみきれませんよね。
家に対する風や光の話はここでは書ききれないほど多くあります。
例えば、東面と西面に窓があった場合に、どちらの窓も風向きに対して開ける(どちらも入口になる)よりも、片方は風向きに素直に開けてもう片方は逆向きに開ける(片方が入口になり、もう片方が出口になる)方が、風の量が5倍くらいになったり、
さらには屋根の形が、真ん中が一番高い三角よりも片方に向かって上がっていく片流れの方が換気の量が多くなったり、
吹き抜けが有るのと無いのとでは、これもまた4~5倍、風の抜ける量が変わったりという実験データがあります。
詳しく話しだすと長くなるので続きはまたの機会に。
家の要素は風だけではないのでこれが全てでは決して無いですが、少なくとも、家なら家、教会なら教会にとっての大切な原理原則を総合的にまとめ、決してコストを増やしていく事ではないのが「デザイン」で、安藤さんの光の十字架のような事がまさに「デザイン力」です。
どんなにお金をつぎ込んでもあのデザインを超える事はできません。
太陽の光はお金では買えませんから。
皆さんもそんな目で、家のデザインを見てみて下さい。
私たちもデザインのプロとしてそこは誰にも負けられません。たとえ相手が安藤さんでもね!笑

 

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