出張版☆家づくり図書館⑳ ~家の風景。なんかイイ家~
こんにちは!暮らし冒険家の白岩です。
肩書きが色々変わってごめんなさい。自分の職種を何て呼べば良いか、迷走しています。笑
誰かイイフレーズ教えて下さい。☆
さて、今日は「風景」というキーワードでお話しができればと思います。
「風景に馴染む家を考えなさい。そうすれば住む人にも馴染むから」
よく学生に言うんですが、、、師匠のパクリです。笑
私もはじめは意味がよく分からなかったのですが、確かに歴史に残る名住宅や、建築賞などを受賞する家はそんな家ばかりです。
住宅設計の基本は、内から考え、外から考え、また内から見直し、また外から見直し、、、の繰り返しなのですが、確かにそれを延々と繰り返していると、建築も人と同じで内面が外観ににじみ出るようになっていきます。
住む人に馴染むというのは、分かる気がします。
住みやすい。使いやすい。心地よい。好き。落ち着く。ワクワクする。。。
いずれも住宅設計においてマストな要素です。
では、風景に馴染むとはどういう事なのでしょう。色々デザインしてきた結果、当てはまるキーワードは、
しっくりくる、なんかイイ という言葉でした。
それは半分は理屈で、もう半分は理屈ではない感性によって導かれます。
まず、風景とはつまりその国、その地域、その敷地の気候風土です。
雨が多い地域なら屋根が大事だし、風が強い地域なら壁が大事。
北海道と沖縄、日本海側と太平洋側では大きく家の造りかたもカタチそのものも変わります。
それらは理論から導かれるカタチです。
もう半分の感性からのカタチとは何か、、、
例えば、日本人で神社やお寺を生理的に受けつけない人って、すごく稀だと思います。
そして、なんか知らないけど懐かしい感じや、神聖な感じや、凛とした感じを受けると思います。
理論が気候風土からくるものだとしたら、感性は文化やDNAレベルのものです。
そしてそれは、気候風土と深い関係性があります。文化は気候風土から生まれますから。
人の命を守る目的で生まれた「家」であれば特に。
デザインセンスや職業とか知識とかは関係ないです。もっと深いところで私たちってほとんどの人が同じ「感性」を持っています。
以前、研究室の助手をしていた頃、学生たちにあるアンケート調査をしてもらいました。
①南欧風の建売住宅 ②日本の町家 ③ガラス張りのクールな家 の3つを見せて、
「なんかイイ」と感じる家はどれですか?
「カッコイイ」と感じる家はどれですか?
街でよく見る家はどれですか?
とアンケートをとった所、「なんかイイ」は②で95%くらい、「カッコイイ」は③で75%くらい、「良く見る」が①で90%くらいでした。予想通りの結果でした。
大量生産住宅が溢れた現代では、よく見るのは①なのですが、私たちの潜在意識の感性にひっかかるのは②なんですね。
そして言うまでもなく、②の家は日本生まれの日本育ちですから、日本の気候風土にもバッチリ適応しています。
数年前、杉並区の建売住宅がずらーっと並んでいる中に、焼杉板という日本古来の技法でつくった黒い小屋みたいな外観の家をつくりました。
周りは真っ白な、なんとか風とかなんとか調という商品名の住宅たち。
やっぱり浮くかな~と建て主さん共々最後までドキドキしていました。
完成して、遠くから眺めて見たら、、、なんとその家が一番風景に馴染んでいたんです。
そこは近くに善福寺川が流れていて緑道があり、周囲に公園や学校がある風景だったからか、川の対岸から見たらその家だけが緑道の木々に溶け込み、逆に周辺に建ち並ぶ〇〇風の家々がすごく異質な風景をつくっていました。
日本だけど日本じゃない、テーマパークのような風景に見えました。その事が今でも心に残っています。
現在、日野市でも日本の町家を踏襲したデザインの家をつくっています。
杉並の家と同じように、周囲の建売住宅とは全然違うのですが、引いて風景として見てみるとこの家だけがなんともこの場所に馴染みます。
なんかイイんです。笑
家づくりってそんなものです。もう今の時代、性能や耐久性なんて当たり前にみんなクリアーしています。(まだ一部のローコスト系は30年前のままですが、、、苦笑)
なので、直感で、感性で、好みで、「なんかイイ」家をつくって下さい。
なんかイイを突き詰めていけばそれは、みんなにとってなんかイイ家になります。
風景にとってなんかイイ家になります。
日本にとってなんかイイ家になります。
そして、あなたとあなたの家族にとって、すっごくイイ家になります。
もちろん、私のような建築デザイナーにとっては「カッコいい」家も大歓迎ですけどね!!笑